保育園の光触媒コーティングは安全?園児が舐めた場合と施工時の注意点

光触媒の主成分である酸化チタンは、化粧品や塗料にも使われる身近な物質です。ただし「酸化チタンだから安全」と言い切るのではなく、製品全体の成分と、施工時・乾燥後の扱い方で安全性を確かめることが大切です。

主成分「酸化チタン」についてわかっていること

光触媒コーティングの多くは、酸化チタン(二酸化チタン)を主成分にしています。酸化チタンは白い顔料として、塗料、日焼け止めなどの化粧品、医薬品の錠剤のコーティングなどに広く使われてきた物質です。

一方で、安全性については次のような評価もあります。

評価・判断 内容
国際がん研究機関(IARC) 二酸化チタンを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)」に分類。主に粉じんを長期間吸入させた動物実験の結果に基づく
欧州食品安全機関(EFSA) 2021年、食品添加物(E171)としての二酸化チタンについて、遺伝毒性の懸念を排除できないとして「もはや安全とは考えられない」と結論。EUでは2022年から食品への使用が禁止
英国の専門委員会 EFSAの遺伝毒性に関する結論には同意しないとの見解を示した
日本 食品添加物(着色料)としての使用が認められている

ここからわかるのは、懸念が示されているのは主に粉じんを長く吸い込む場合と食品として日常的に食べる場合だということです。壁に固着した膜とは状況が違いますが、だからこそ「施工中に吸い込まない」「乾燥前に触れない・口に入れない」という管理が大切になります。

「舐めても大丈夫?」を考えるときのポイント

保育室では、乳幼児が壁や床、棚を舐めてしまうことは十分に起こりえます。安全性は、次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。

1. 乾燥・硬化した膜の状態

しっかり硬化した膜は表面に固着しており、少し舐めた程度で大量の成分が体に入ることは考えにくいとされます。ただし、膜がはがれたり粉っぽくなったりしていないかは定期的に確認が必要です。指でこすって白い粉が付くような状態なら、施工業者に相談しましょう。

2. 酸化チタン以外の成分

コーティング剤には、酸化チタンのほかに、膜を固定するための成分(バインダー)、溶剤、性能を高めるための銀・銅などの金属成分、香料などが含まれることがあります。安全性は製品全体の成分で判断する必要があり、SDS(安全データシート)の確認が欠かせません。

3. 施工中と乾燥前

もっとも注意が必要なのは施工中と乾燥前です。スプレー施工では細かいミストが空気中に舞い、乾燥前の面は触れると成分が手に付きます。この時間帯に子どもがその場にいないようにすることが、安全管理の基本です。

業者に求めたい安全性の資料

導入前に、次の資料を業者から受け取り、園で保管しておきましょう。

  • SDS(安全データシート):成分、危険有害性、応急措置、取り扱い上の注意
  • 安全性試験の結果:誤って口に入った場合の毒性(急性経口毒性)、皮膚への刺激性、皮膚アレルギーの起こしやすさなど
  • 乾燥・硬化に必要な時間と、その間の立ち入り制限
  • 施工方法:スプレーか、刷毛・ローラーか。ミストの飛散対策
  • はがれや劣化の確認方法と、再施工の基準

資料をすぐに出せない、または「天然成分だから安全」「酸化チタンだから無害」といった説明だけで済ませる業者は、慎重に判断しましょう。

保育園で施工するときの注意点

  • 施工は休園日など子どもがいない日に行う
  • 施工中・乾燥中は窓を開けて換気し、職員もミストを吸い込まないようにする
  • 製品が定める乾燥・硬化時間が過ぎるまで、保育室を使わない
  • 乳児が口に入れるおもちゃ・食器・寝具には施工せず、従来どおり洗浄・消毒で管理する
  • アレルギーのある子どもがいる場合は、成分を保護者・嘱託医と共有する

安全性を確認したうえで、役割を正しく位置づける

安全性が確認できたとしても、光触媒コーティングは感染症対策の主役ではありません。手洗い、適切な消毒、換気、嘔吐物の正しい処理といったガイドラインの基本を前提に、補助として使うことが適切です。感染症対策との関係は保育園の感染症対策と光触媒で解説しています。

よくある質問

光触媒コーティングした壁を子どもが舐めてしまいました。大丈夫ですか?

完全に乾燥・硬化した膜を少し舐めた程度で、大量の成分が体に入ることは考えにくいとされます。ただし製品ごとに成分が違うため、SDS(安全データシート)で成分と応急措置を確認してください。気分が悪そうな様子があるなど心配な場合は、医療機関や中毒110番に相談してください。

施工した日に園児が登園しても問題ありませんか?

製品が定める乾燥・硬化の時間と換気を守る必要があります。スプレー施工では細かいミストが舞うため、子どもがいない休園日などに施工し、十分に換気・乾燥させてから使用を再開するのが安全です。

酸化チタンは発がん性があると聞きましたが本当ですか?

国際がん研究機関(IARC)は二酸化チタンを「ヒトに対して発がん性がある可能性がある(グループ2B)」に分類しています。これは主に粉じんを長期間吸い込んだ動物実験の結果に基づくものです。乾燥した膜の状態と粉末を吸い込む状況とは同じではありませんが、施工時のミストや粉を吸い込まない対策は必要です。

参考資料